あらすじ

第二次大戦後の1945年。そこは零下40度の厳冬の世界・シベリア…。わずかな食料での過酷な労働が続く日々。死に逝く者が続出する地獄の強制収容所（ラーゲリ）に、その男・山本幡男は居た。「生きる希望を捨ててはいけません。帰国（ダモイ）の日は必ずやって来ます。」絶望する抑留者たちに、彼は訴え続けた――

身に覚えのないスパイ容疑でラーゲリに収容された山本は、日本にいる妻・モジミや４人の子どもと一緒に過ごす日々が訪れることを信じ、耐えた。劣悪な環境下では、誰もが心を閉ざしていた。戦争で心に傷を負い傍観者と決め込む松田。旧日本軍の階級を振りかざす軍曹の相沢。クロという子犬をかわいがる純朴な青年・新谷。過酷な状況で変わり果ててしまった同郷の先輩・原。山本は分け隔てなく皆を励まし続けた。そんな彼の仲間想いの行動と信念は、凍っていた抑留者たちの心を次第に溶かしていく。

終戦から８年が経ち、山本に妻からの葉書が届く。厳しい検閲をくぐり抜けたその葉書には「あなたの帰りを待っています」と。たった一人で子どもたちを育てている妻を想い、山本は涙を流さずにはいられなかった。誰もがダモイの日が近づいていると感じていたが、その頃には、彼の体は病魔に侵されていた…。

松田は、危険を顧みず山本を病院に連れて行って欲しいと決死の覚悟でストライキを始める。その輪はラーゲリ全体に広がり、ついに山本は病院で診断を受けることになった。しかし、そこで告げられたのは、余命3ヶ月―　山本により生きる希望を取り戻した仲間たちに反して、山本の症状は重くなるばかりだった。それでも妻との再会を決してあきらめない山本だったが、彼を慕うラーゲリの仲間たちは、苦心の末、遺書を書くように進言する。

山本はその言葉を真摯に受け止め、震える手で家族への想いを込めた遺書を書き上げる。仲間に託されたその遺書は、帰国の時まで大切に保管されるはずだった…。ところが、ラーゲリ内では、文字を残すことはスパイ行為とみなされ、山本の遺書は無残にも没収されてしまう。山本の想いはこのままシベリアに閉ざされてしまうのか！？死が迫る山本の願いをかなえようと、仲間たちは驚くべき行動に出る――

戦後のラーゲリで人々が起こした奇跡――　これは感動の実話である。（出典元：公式HPより）

https://lageri-movie.jp/

「ラーゲリより愛を込めて」をおすすめしたい理由は3つ！

①実話に基づいたノンフィクションであるところ

この作品、観る前は「終盤で泣いちゃいそうだなあ」なんて思っていたのですがとんでもない！序盤から中盤、もちろん終盤まで感情がゆさぶられまくりました。涙を拭いて鼻をかんで、また涙…の繰り返しでした。ラーゲリが収容所を指すことも知らず、てっきりモスクワのような地名かと思っていました。第二次世界大戦終了後からを描いた作品なので、戦争を知らない私からすると目を背けたくなるようなシーンも多くありました。そして二宮さん演じる山本幡男さんが実在した人物で、その山本さんを知る方々から聞いた話を元に描かれているノンフィクションだと知って、ますます胸が苦しくなりました。目を背けたくなる描写は作品ではなく史実なのだと。物語は終戦後にシベリアの収容所（ラーゲリ）に送られるところから進んでいくのですが、すぐにダモイ（帰国）できると思いきや9年、11年と時が過ぎてゆく残酷さ。悲観的になる仲間たちを前に、ただひとり希望を唱え続けた山本さんが病に倒れたときに見せた心からの思い。そんな山本さんに心を動かされた仲間がなんとしても山本さんの家族へ遺書を届けようとする熱意。そのすべてが「戦争」という悲惨な歴史から始まっているのだと思うと単なる感動ではない、極限状態にある人間の生き様、生への執着をそこに見たような気がしました。ちなみに、劇中に登場する「クロ」という犬がいるのですが（観ている私達にもつかの間の癒しをくれます）、このクロとのエピソードも実際の出来事から描かれているそうですのでそちらにもぜひ注目してみてください。

②主演二宮和也さんの演技

言わずもがな演技に定評のある二宮さんですが、この作品も期待を裏切らないものでした。二宮さんといえば、最近の私は「ジャニのちゃんねる」や「ニノさん」を観ていてバラエティに二宮さん出てると面白いなあなんて思っていたので、素敵な俳優さんだということうっかり忘れかけておりました。（失礼。あ、でも「マイファミリー」好きで観てました！）二宮さんはこの作品でブルーリボン賞の主演男優賞を受賞されたのですが、納得です。穏やかな人柄の奥底に生きることへ執念を感じさせてくれる、鬼気迫る演技で魅せてくれました。特に後半、病床に伏すシーンでは病に侵されていくさまを見事に演じきっていて、口元の動きや指先のかすかな震えなどひとつひとつの動作から目が離せませんでした。固く閉ざされた日本人捕虜たちの心に一筋の光を注ぎ込み続けた山本さんの想いが、二宮さんの全身から伝わってきたのです。

③松坂桃李さんの表情

シベリアの収容所（ラーゲリ）へ向かう貨車の中で山本と出会い、のちに遺書を託される4人の内のひとり松田研三を演じているのが松坂桃李さんです。セリフとしては他のメインキャストに比べて少ないかな？という印象がありましたが、その分表情での演じ分けが素晴らしく見入ってしまいました。目線や顔の動きひとつで心情がひしひしと伝わってくる演技力に改めてすごい俳優さんだなと思いました。また、終盤山本家を訪れた際には、今まで押し殺していた感情が堰を切ったように溢れ出しており、それまでとの対比にぐっとくるものがありました。（ただその分、松坂さんの後に登場する桐谷健太さん、中島健人さんの演出に少し物足りなさを感じてしまった部分はありましたが…。）

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